(塗装の品質管理について)

1.なぜ塗り重ね時間の規定があるのか?
下塗りを塗った後に次の工程に移るまでの時間というのは
大まかに決まってます。
 
例えば、「下塗りをしてから1日以降7日以内に
次の工程を行なってください」ということだったとすると、
塗り重ねられるまでの乾燥時間が最低1日であり
7日を過ぎてしまうと塗った壁に埃や汚れがついて密着が悪くなる
ということです。
また、塗った後にはしばらくタック(ベタつき感)が残ります。
このベタつきが次の塗料と結合してより強固な塗膜を形成します。
ベタつき感が埃をよぶとも言えるので、ここも注意が必要なポイントです。
 
下塗り後に雨などが降ってあまりにも濡れてしまうのは
もちろん良いことではありません。
タックが弱くなったり、なくなったりするからです。
(そのために層間プライマー等があります)
 
上記の例ですと「1日以降」としましたが、
塗り重ね時間が2時間等で2日後に雨が降るという予報が出ていた場合は、
それまでに仕上げられる面積を考えて仕上げをすすめた方が良いです。
 
その他にも風が吹いて埃がたくさん付いてしまうなど
環境や天候など考慮しなくてはならないことは結構あります。
 
ただ、あまりにも神経質に現場でこういったことを厳守していこうとすると
現場の諸事情があったり難しい面もありますので
品質を考える際のご参考にしてみてください。
2.撹拌を丁寧にする理由
塗料の混ぜ方ですが、これも重要なポイントです。
 
メーカーから運送屋さんが現場に運んでくれますが
その間に中身が分離してしまうので
必ず撹拌器などで混ぜてあげた方がいいです。
 
混ぜ方としては、
缶の四隅から全体をなるべく空気に触れさせないように意識して
2~3分混ぜるとかなりクリーミーな状態になります。
何も考えずに「サッサと練って塗りいこう」と
鼻歌交じりで混ぜた材料と
意識して練り上げた材料とでは大きな差があって当然です。
この状態が維持できれば塗装の出来がワンランクアップします。
 
また、空気が入り過ぎてしまうと塗ってる最中に気泡が出るので
良いことではありません。
3.正しく塗れているか?の確認の方法
塗り方ですが、例えば、ローラーで塗る場合には、
まず1平米なら1平米で塗料を配って横に切り、
更に足りてない所に塗料を配って仕上げていきます。
 
「1平米当たり0.12キログラム付ける」とした場合は
わからないうちは測ってからそれを塗ってみて
感覚を手に馴染ませていくと次第にわかるようになってきます。
ある程度経験を積めば、塗膜が薄過ぎたか厚過ぎたかが
仕上げ肌から予測をつけることができるかと思います。
 
時間が無限にあるわけでもなく、現場は一人でやるわけではないため
中には「仕上がった風でいいんだ」というお考えの方もいらっしゃるので
なかなか難しいかもしれませんが、
真剣に自分の肌で感じながらやるということは
何も考えずにとりあえずこなす・自分の気分が良いのがベストと
思っているのとは一味違う感覚がありますし、
塗装の質もランクアップして仕上がります。
4.ケレン、下地調整のポイント
塗装屋の仕事で難しいのは下地調整です。
 

まずケレン作業で塗る前に塗膜の傷んでいるところを

撤去、掃除して塗料を密着するようにしますが、
状況により様々なやり方を選択して行わなくてはいけません。
 
気をつけた方が良いポイントは、
一回下地から離れた塗膜は絶対に剥がさないと
いくら上から塗っても全く意味がありません。
もちろん、表面に色は付きますが、空気が入っているので
膨れてきたりして長く持ちません。
また、「こういった場合は、電動サンダーでケレンすれば良い」という
方もいらっしゃいますが、
これも考えもので、サンダーの振動でケレンしてる周りの部分を
共浮きさせてしまうことがあります。
 
下地の状況とどういうケレンがベストか?
本来であれば「ベストチョイス」と思われることがなんらかの理由で
できない場合に、かけられる予算内で可能なケレン方法は?
ということを考えていかなくてはいけません。
 
浮いてる部分をどこまで調整するか、どこまで密着させたいか、
見た目の仕上がりをどこまで求めているのか。
…といったことを考えて
ケレン作業を計画して行わなければならないと私は考えます。
5.養生のポイント
養生のポイントは塗らないところを汚さない。
塗りぎわの線を通す。
動線を確保して足元が汚れていたら履いている靴を交換する。
…などが考えられます。
 
特にローラーを洗ったり、刷毛を洗ったりしてるときに
周囲を汚してしまうことがあるので気をつけないといけません。
この塗料使用後の片付けは見習いの子に任せることが多くなりますが、
こういう細かい部分を職人がそばについてしっかり教えてあげていないと、
よそのお宅の敷地や周辺の道路を汚してしまうことがあるので
要注意です。(特に足裏の汚れなどはうっかりしてしまうところです)
 
他に、私が養生作業で意識しているのは、
風でビニールが煽られてバサバサ音がでないようにすることと
線だしのポイントとして、まずはテープ側に透明シーラーを
軽く入れてあげることです。
改修ではアンダーフィラーで下塗りをすることがほとんどですが
いきなりフィラーを入れると漏れてしまい手直しが増えてしまうので、
シーラーを入れてから(二面接着のシールのプライマーを塗る感じ)
フィラーをだめ込むように塗り、中・上塗りと仕上げてから
テープを剥がして線を直すといった感じです。
以前、手伝いで行った塗装店では
最初マスキングテープを貼り、次にマスカーで貼り、
さらにマスキングテープで捨てテープを貼るというやり方をしていました。
(フィラーマスチック後、捨て剥がし)
綺麗ではありましたが、それでも少々の掃除と線だしはありました。
 
また、ちょっとしたことですが、
テープを使うときに指でちぎっていると
爪が浮いてきてしまい辛くなりますので
面倒でもハサミ等道具で切ることをオススメします。
本当に痛くて辛いときがありますよね、特に親指の右側と左側。
一回浮いてしまうとどうにもなりません。